『公益になってもう解散?認定後の落とし穴』
2012年10月11日

公益総研 非営利法人総合研究所
首席研究員兼CEO 福島 達也
(公益財団法人公益推進協会 代表理事)

 

暑い夏が終わり・・・と書き出してみたが、終わらない。今日も32度。事務所の私の部屋はエアコンをつけなければ40度だ。

「暑いですね」という挨拶ももう飽きたから、明日会う人には「寒いですね」とでも言ってみるか・・・ おそらく「あなたのギャグの方が寒いですね」と返されるのは必至だ。

 

さて、残り1年少々になった公益法人の移行期間。2万のうちの半分は移行済みだが、まだ半分ある。恐らく移行法人の申請担当者は今ごろ皆必死だろうが、私が心配するのは内閣府と県庁の担当職員の健康だ。

聞くところによるとそんなに行政庁の担当職員数は増えていないらしい。それなのに、今までの3倍も4倍ものペースで片付けないと、終わらないような感じで、申請は今後ラッシュを迎えるだろう。昨年末には異動願いがかなり出ていたらしいが、今年は出さない人がいるのだろうか・・・。

とにかく、健康に留意して、頑張ってほしい。

さらに、それを助長するような法人も出現しているらしい。

もちろん、頑張っている法人もあるが、中には今まで一度も事業報告も出していない公益法人もあるという。または、パソコンもないから手書きで、何度も直すから申請書を真っ黒にしてくる人もいると聞く。他の認定された団体の申請書をそっくりまねてくる法人などは日常茶飯事らしい。

それで間に合うの?と思わず聞き返してしまう・・・。

期限の来る平成251130日は、きっと法人名を書いた白紙の紙を提出させ、「とりあえず延長〜」というのが関の山だろう。

なぜって、その日までに一度でも申請書(白紙でも)を提出していれば、修正に何年かけてもよい法律だからだ。なんだか、55年と言っていたのがバカバカしくなってくる。

 

さて、そんな申請の必死の現場をよそに、せっかく公益法人になった法人が、今年になってもう3法人も解散したことを知っているだろうか。昨年まではなかったのに、もう3法人だ。

これを聞いて「解散するのは特例民法法人の話だろう・・・」と思うだろうが、そうではない。立派な公益社団法人と公益財団法人だ。解散するのであれば公益認定なんてとらなければいいものを・・・と思う人も多いだろう。私も同感だ。

 

しかし、それだけ公益法人の認定申請はとても過酷で、しかも空虚なものなのかもしれない。「あれだけ苦労してとった公益認定なのに、移行後もあんまり変わらない」という声はよく聞く。

それならまだいい。「あんなに苦労して認定をとったのに、もう力は残っていない・・・」という法人が出てきたのだ。これは大変だ。

認定後も、役員変更、定款変更、定期提出書類・・・などと次々と申請は続き、さらに、申請時は予想で作ったものだからいくらでも認定されるように作れるが、最初の決算後から本当の試練が始まるのだ。特に財務3基準は、計画と実際では状況も変わっているし、役員も変わり、考え方も違ってくるから、さー大変。

今後、認定は簡単に取れたが、定期提出書類は簡単に通らない・・・などという事態が続出するだろう。

とにかく、認定や認可後にすぐ解散とならないよう、事前に十分な議論をして移行申請を検討してほしいが、それが遅かった(移行してしまった)場合は、簡単に結論を出さずに、じっくりいろいろな方面で検討をしてほしい。

どんなに苦しくても、大変でも、生き残る道、乗り越えられる道はあるからあきらめないでほしい。ちょっと意味深だが、わかる人にはわかるはずだ・・・。



 

公益総研株式会社 非営利法人総合研究所

戻る